君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



つまるところやることがなく暇なので、例え空返事しか返ってこなくても、何時間も黙ったままじっとしているよりはマシだ。


そうか、寂しくないのか。


実家から離れたことのない私からしてみれば、一人暮らしは尊敬に値した。


帰っても家の中は暗くて、電気をつけても誰もいなくて、話し相手もいなくて、テレビを観る時もご飯を食べる時もひとりで。


私はひとりの時間も好きだけれど、それは家の中に家族がいる上でのひとりであって。毎日ずっとひとりなんて、想像しただけで少し寂しい。


でもまあ、豊橋ならいつでも帰れるし、大学へ行けば友達もいるし、私が想像しているよりは寂しくないのかな。


「実家でもずっとひとりだったし。今さらだよ。もう慣れた」


目線はパソコンの画面に向いたまま、右手はマウスに置いたまま言った。編集作業をしている時に郁也が一言以上を返してきたのは初めてだった。


「え……?」


「うち、母親いないから。俺が中学の時に出て行った。父親は出張とか多くて忙しいから、あんまり家にいない」


言いながら、郁也は淡々と編集作業を進めていく。