初投稿をするまでに二ヶ月もかかったわけで、でもそれは練習日が少なかったからであって、練習日が増えるなら動画投稿の頻度も上げるのだろうか。
と思いきや、郁也は投稿の頻度よりも完成度を上げたがった。おかげで、郁也の注文はどんどん増えていくばかり。
『腹から声出せ』
『高音を声量でごまかしてるように聞こえる時がある』
『高音をもっと静かに、柔らかく歌ったりできねぇの?』
素人の私にそんなことを言われても困るのに、難易度がどんどん上がっていく。
私は褒められて伸びるタイプだから、その場から逃げ出してしまいたいのは山々だったけれど、根性なしと思われるのが嫌で。二十一年も生きているのに、自分が負けず嫌いだったことを初めて知った。
お互いのスマホにはback numberの曲が全曲入っていて、練習の合間にはいつも曲を流していた。
同じ物をずっと食べていたら飽きるように、同じ曲をずっと聴いていれば飽きがくる。けれど私たちは、飽きることなくずっとback numberの曲ばかり聴いていた。
そして飽きることなく、毎日のように一緒にいた。


