郁也が手羽先が食べたいと言うので、私の行きつけでもある手羽先が有名な居酒屋に入った。郁也からすると、「俺の行きつけだよ」らしいけれど。
同じ大学で、同じ学年で、家も近所で、行きつけの居酒屋も同じで。今まで出会わなかったのが不思議なくらいだ。
もしかしたら、私はあまり周りが見えていないのかもしれない。郁也も視野が広いタイプには見えないというか、他人にあまり興味がなさそうだし。
出会ってからもう二ヶ月。まだ二ヶ月。もはやふたりでいるのが当たり前になりつつあるけれど、もしもあの時、カラオケで声をかけてくれていなかったら、こうして一緒にいることもなかっただろうな。
ああ、でも、今日で念願の動画投稿を終えたわけだし、これからは、大学や道端や居酒屋で偶然会った時に「よう、久しぶり」なんて言い合うだけになるのかな。そう考えると、胸のあたりがチクリと痛んだ。
座敷席にテーブルを挟んで座り、運ばれてきた生ビールで乾杯をした。
私はたぶん酒豪と呼ばれる部類で、自分と同じペースで飲み続ける人をあまり見たことがない。
次々と注文して次々と飲み干す郁也にそんな話をしたら、「俺もこんなに飲む女初めて見た」と笑ってから、また飲みにこようよ、と付け足した。
なるほど。そうか、これからは飲み友達になるのか。


