君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



近距離で目が合ったのは、私が郁也を見たのは、「できた」という声を聞いたからであって、また横顔を見ていたわけではない。そんな無意味な言い訳を心の中で繰り返した。


「え?」


「投稿できた」


パソコンの画面には、『投稿完了』という文字が浮かんでいる。


「え!? 投稿する前に私にも見せてよ!」


「投稿した動画見ればいいだろ」


それはそうなんだけど。いや、そうじゃなくて。


変な顔をしていないか、とか、二重顎になっていないか、とか、ちゃんと歌えているか、とか。事前に確認する項目は山ほどあるのに、女心というものを全くわかっていない。


いや、郁也にそんなことを考えろと言っても無駄なことはじゅうぶんにわかっているはず。


一緒に観る?と目尻を下げて笑うから、文句を飲み込んで、パソコンの画面を見るフリをして目をそらした。


再生ボタンを押すと、画面に映ったのは私たちの姿ではなく、いつの間に撮ったのかわからない花束の静止画と“back number 『花束』 cover”という白文字のテロップだった。


それが三秒間ほど流れてから郁也のギター演奏が始まり、今日撮影したスタジオが映し出される。