君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



手伝うことがないのなら、どうして私を連れてきたのか。


大いに疑問ではあるけれど、じゃあ帰れば、と言われるかもしれないので、「そっか」とだけ返して動画の編集作業をじっと見ていた。


鼻、高いな。まつげはちょっと短くて、ちょっと逆さまつげになってる。目線を下げているから、いつも奥に隠れている二重の線がくっきり見える。


編集作業をじっと見ていた……はずなのに。


私の目線はいつしかパソコンの画面ではなく、真剣なまなざしで作業を進める郁也の横顔に向いていて。


それに自分で気付いた時、カアッと身体が熱を帯びたのを感じて、慌ててパソコンの画面に目線を戻した。


今は郁也になにか言われたわけでもされたわけでもないのに、私の身体はいったいどうなってしまったのか。


意志に反して勝手に動いてしまう、自分の身体じゃないようなこの感覚を、私は知っている気がする。


こんな静まり返った部屋じゃ落ち着かない。もっと物音がないと、個人的に困る。


そんな私の葛藤が、集中モードに入っている郁也に伝わるわけもなく、「……できた」とパソコンから手を離したのは、編集作業を開始してから二時間が過ぎた頃だった。