立ったままの私をちらりと見て「ん」と隣を指さした。
そこに座れという意味だろうか。この二ヶ月でわかったことは、郁也は集中モードに入ると極端に言葉が足りなくなるということ。
今さら「お邪魔します」と小さく言って隣に正座をすると、郁也が急に体勢を崩してあぐらをかいたから、膝と膝がコツンと当たった。仮に心臓が体内を移動するのなら、今私の心臓は間違いなく右膝にある。
画面にある大量のアイコンの中から、ひとつのアイコンをダブルクリックして開いた。それから動画を取り込んだりマウスを動かしたり、クリックしたり、文字を打ったり消したり。
隣で見ていても、機械音痴の私にはなにがなんだかわからない。ひとつだけわかることは、画面の中央には今日撮影した動画が表示されているから、郁也は今、動画の編集をしているということ。
動画をそのままサイトにアップするだけかと思っていたのに、私の存在を忘れているかのように黙々と作業を進める。
「あ、あの、私もなにか手伝おうか?」
「いや、大丈夫」
見向きもせずに放った言葉は抑揚がなく、ほとんど空返事だった。


