なにも言わないまま呆然としている私の目の前に立った郁也は、小さく微笑んで両手を広げると、私をぎゅうっと抱き締めた。 郁也の胸のあたりに顔が埋まり、ドクンドクンと大きな振動が伝わってくる。 「ちょ、フ、フミ?」 「やっぱりお前に声かけてよかった。ありがとな」 これじゃいくら顔が赤くならなくても、熱くなっている体温も、郁也に負けないくらい大きく鳴っている心臓の音も、全て郁也に伝わってしまう。 「……うん」 でも、いいや。今なら、この感動のせいにできるから。