君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



怒られながら何度かやり直しをしていくうちに、少しずつ緊張が解けて喉が開いていく。


カラオケ以外でこんなに広い場所で歌うのは初めてだけれど、マイクを使っていないのに声が響き渡って気持ちいい。自然と声が弾んでいくのがわかった。


郁也からストップがかかることなく最後のフレーズまで歌い切り、『花束』は後奏がないから、同時にギターの音も途切れる。


弦から指を離した郁也は真顔のままゆっくりとこちらを向いて、もしかしてダメだったのかな、と不安になる隙もなく、今までで一番の笑みを見せた。


「……ヤバイ。俺、今すげぇ感動してる」


言いながら、ギターをスタンドに置いた。


私もだった。


爽快感と、達成感と、夢心地と、感動と。


どう例えるのが正解なのかわからない様々な感情が一気に溢れてきて、心臓がドクンドクンと大きく波打っている。


それは初めて郁也に声をかけられた時のそれとよく似ていた。あの時よりも、もっともっと、大きいけれど。


「バンド組んでた時よりずっと、今までで一番気持ちよかった。見て、すげぇ鳥肌立ってる」


私も、と言いたいのに、うまく声が出ない。


明日からしばらく声が出なくてもいいや、というくらい思いっきり歌ったからだろうか。それとも、また膨らんでいる胸が、喉を圧迫でもしているのだろうか。