君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



郁也といると、どれだけ平常心を保っていても、体温が急上昇する瞬間が何度も訪れる。


私はあまり顔が赤くならないタイプだけれど、それでも顔から、いや、もう全身から湯気どころか火が出そうなくらいに熱い。


「さっさと撮るぞ。金払ってんだから」


「う、うん」


私のイメージ、って。太陽の光に照らされている、この真っ白な空間が?


どういう意味だろう。歌声のイメージっていうことかな。いや、私の歌声はこの空間に合うような澄んだものではない。少し言い違いをしただけで、曲のイメージってことかな。それなら納得がいく。


いや、そもそも深い意味はないのかな。うん、たぶんないだろうな。


深い意味があるのなら、涼しい顔をしてさっさとカメラを三台もセットしたりギターのチューニングを始めたりしないだろうし、「お前も早く準備しろよ」と睨んできたりもしないだろうし。


いくら自分に言い聞かせてもなかなか平常心に戻ることができなくて、開始早々、郁也に思いっきり睨みつけられてしまった。


撮影は一時間で終わらせると脅されていたから、郁也と待ち合わせをする前、一時間ほどカラオケに寄って発声練習をしてきたし、喉の調子も良くて準備万端だったのに。


声が裏返ったのは、今回ばかりは郁也のせいなのに。