「あのね、フミ」
右手をぎゅっと握り締めて、郁也の目を真っ直ぐ見た。
「今までありがとう。楽しかったよ」
ずるいなあ。私はこんなにも堪えているのに、どうして郁也が泣きそうな顔をしているの?
ずるいなあ。バカだなあ。
でも……やっぱり、好きだなあ。
自然と頬が緩むのを感じた。作り物の笑顔なんかじゃなかった。今、自然と笑うことができた。
ああ、そうか。笑い方を忘れたのかと思っていたけれど、こんなにも簡単なことだったんだ。
郁也との四年間を思い出すだけで、郁也を想うだけで、笑顔を取り戻すことができるんだ。
「……ユズ?」
どうして今、こんなことを考えているのだろう。
今浮かんでいる疑問は、“好きだから”だけではクリアにならない気がした。
“好き”だけじゃ足りなかった。もっともっと大きくて、けれどとても優しく、とても穏やかな想い。
ああ、私、郁也のことを愛してる。
恋と愛の違いなんてわからない。けれど今、確かに彼を愛してると思った。
そんな大切なことに今さら気付くなんて、私もバカだなあ……。
「“また”とか、もうないよ。こんな状況で、あんな態度取られて、冷めるに決まってるじゃん」


