寝静まったら抱きついてくる癖も嘘。本当は起きてたんだよね。『ごめん』が言えない郁也の、不器用な『ごめん』だったんだよね。
空港まで送ってくれるだけだと思ったけれど、郁也は駐車場に車を停めて私の荷物をおろした。中まで送る、と小さく言って歩き出す。
チケットを発行して、荷物を預けて。車できたおかげで、飛行機までの時間にはかなり余裕ができていた。
けれど私は、郁也に時間を聞かれた時、「ちょっとギリギリかも」と嘘をついた。
急ぐフリをして手荷物検査場の前に着くと、郁也は空いた左手で私の右手を握った。
「ユズ」
私、けっこうひどいことされたよね。郁也、けっこう最低だったよね。
それなのに、どうしてだろう。どうしてこんな時にこんなことを考えているんだろう。今思うのは、憎しみなんかじゃなくて。
「……ごめんなさい‼︎」
郁也は繋いでいた手をぎゅっと握って、ぎゅっと目を閉じて、そう言った。
「……フミ?」
「……ごめんなさい」
「……うん」
「ごめん……ごめんな」
「……うん」
「本当にごめん」
「……ん」
初めて聞いた郁也の『ごめん』は、ひどくかすれていた。
ゆっくりと目を開けて、ゆっくりと私を見る。
向けられた目は少し潤っていて、真っ赤に染まっていた。


