君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



***


荷造りはたったの数日で終わり、半分空いたクローゼットを呆然と見ていた。


寝室の隅には積み重ねられた段ボールが四箱。一年も住んだのに、たったのこれだけで私がいた痕跡がなくなってしまうのだと思うと、なんだか笑えてきた。


この家を出る日まで残り一週間になった頃、私のスマホを鳴らしたのは彩乃だった。郁也かと期待することは、もうなかった。


ティッシュで鼻をかんで、コホンと小さく咳をした。


『もしもし、ユズ? 久しぶり』


「久しぶりだね。どうしたの?」


鼻声になってはいるけれど、電話だし、彩乃とこうして電話をするのは数ヶ月ぶりだし、なんとかごまかせるはず。


彩乃は仕事が忙しいから、あまり連絡をとっていなかった。私も--とても連絡をする気分にはなれなかった。


彩乃には今までなんでも話してきたのに。前に私が失恋した時だって、彩乃が失恋した時だって、いつもふたりで一緒に泣いたのに。そんな彩乃にさえ、なにも言えなかった。


『最近、SNSの更新も動画投稿も全然してなかったから、気になって。……なんかあった?』


ツン、と鼻の奥が痛くなった。


ああ、私、なにを考えていたんだろう。


なにかあったら必ず連絡をすると約束したのに。