「わかってるよ」


「よし、決まり。……で、お前、名前なんだっけ?」


名前すら知らない相手を、よく一週間も口説き続けたな。まあいつも『お前』と言われているから、そんな気はしていたけれど。


それに私も、実は彼のフルネームを知らないままだった。


「あ、俺が先に言うのか。桜井郁也(さくらいふみや)。フミでいいよ。みんなにそう呼ばれてるし」


「川村柚香(かわむらゆずか)です。……ユズでいいから。みんなにそう呼ばれてるし」


「ユズ、な。改めて、よろしく」


差し出された右手に、戸惑いながら右手を伸ばす。


手が大きくて指が長い。手の甲に当たった彼の指先は硬くなっていて、どれほどギターを弾いてきたのか、初心者の私でさえわかるほどだった。


こうして私は、彼--郁也と動画投稿をすることになった。