君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



わからないのに、その涙はとめどなく溢れてくる。何度も何度も手の甲で拭っているのに、それはエプロンに水玉模様を描いていく。


「……なん、で」


突然体の力が抜けたみたいに膝から崩れ落ちた。止まらない涙を拭うことは諦めて、いっそ止まらないなら枯れるまで流してしまえばいいと思った。


郁也との思い出の分だけ、郁也への想いの分だけ流れるのだとしたら、しばらく枯れることはないだろうけれど。


もう、終わりなのかな。


ずっと一緒にいられると信じていたのに、いつの間にすれ違っていたのだろう。いつから違う未来を見ていたのだろう。私が立ち止まっているうちに、どんどん溝が深まっていた。


ずっとずっと、本当は気付いていた。でも気付かないフリをするしかなかった。


だって、ふたりはもうダメだなんて、そんな現実をどう受け入れろと言うの。


だから現実を見ないようにして、「まだ大丈夫」って思える理由を無理矢理に探していた。郁也の嘘に気付きながらも、それでも、私の元に帰ってきてくれることを願っていた。


バカだなあ、私は。


郁也が自分の家にいられないのは、私がいるせい。そんなことはじゅうぶんわかっているのに、それでも、自分からこの家を出ていくなんて言えなかった。