君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



***


派遣先のコールセンターは、退職する二週間前に言わなければいけない。二週間後に退職すると伝えて、そのさらに二週間後に飛行機を予約した。


郁也には『一ヶ月後じゃなければ辞められない』と嘘をついた。


そんな嘘をついたところで、郁也は私がいる限り、きっと家には帰ってこないのに。一緒にいられるわけじゃないのに。


郁也はもう、私が起きている時間に帰ってくることはなかった。正確には、私が寝たフリをする時間、だけれど。


壁側を向いて、布団を肩までかける。そっと布団に入ってきた郁也の寝息が聞こえてくると、私の身体は温かい腕に包まれる。


背中に郁也の気配と体温を感じても、深い眠りにつくことはできず、浅い眠りにつく。そんな毎日が続いていた。


急に辞めたら迷惑をかけてしまう、と言い訳をしたかったけれど、二百人もいるオペレーターの中から私ひとりが抜けたところで、きっとなんの支障もない。


その証拠に、退職することを伝えても「わかったよ、あと少し一緒に頑張ろうね」と張り付いた笑顔を向けられただけで、引き留める言葉なんて一切なかった。正社員で働いていたら、もっと引き留めてもらえたのかな。


ああ、もう。私はどうしていつまでもこんなことばかり考えているんだろう。