いや、正確には、まだその“初めて”すら達成されていない。 話し終えた郁也は、目の前にあるマグカップを手に取ることのないまま、黙ったまま立ち上がって寝室へ向かった。 「……ちゃんと話すって、言ったくせに」 声は郁也に届くことなく、湯気に紛れてふっと消えた。 ずるいなあ。まだ私にちゃんと言ってないことがあるでしょう。 ずるいなあ。どうして自分で言わないかな。 『帰れ』って--『別れよう』って、ハッキリ言ってくれないんだね。