小鉢に入っているきんぴらごぼうに手を付けた郁也は、無表情のまま一言そう言って、他の料理を口に運んでいった。
きんぴらごぼう作ったの、初めてじゃないんだけどな。前に作った時は、うまいうまいって食べてくれたのに。
もしかして、本当はずっと、口に合わなくても我慢して食べてくれていたのかな。他にもたくさん、本当は我慢してくれていたことがあったのかな。
幸せだと思っていたのは、私だけだったのかな。
その日、郁也は完食しなかった。食べるって言ったの、郁也なのに。
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