私からの連絡を無視して、こんな時間に帰ってきて、第一声がそれなんだ。土曜日なんだから、休みに決まっているのに。


「休みだよ」


「……そう、だよな。あー……腹減ってる? なんか買ってくるけど、なに食いたい?」


どうしてそんな普通に話せるんだろう。


普通じゃないか。テレビをつけたり冷蔵庫を漁ってみたり、なにかしているフリをしながら、一度も私の方を見ない。


賑やかになったリビングに、私たちの声はなかった。


もう怒る気力もなかった。どうしたらいいかわからなかった。


だから、大きく深呼吸をしてから、口角を上げて目を細めた。


「残り物でいいなら、あるけど」


「そっか。食う食う」


「すぐ準備するね」


ソファーから腰を上げてキッチンへ向かう。


冷凍庫にはジップロックに入っている食材がぎっしり詰まっている。でも日付を書いていなかったから、どれがいつ作った物なのか、もうわからない。


なるべく記憶に新しい物をいくつか取り出して温めながら、急いでスープも作った。サラダも作りたかったけれど、レタスもきゅうりもトマトも、少し傷んでいた。


温めた料理をテーブルに並べていっても、『うまそう』と笑ってくれることはなくて。


「俺、きんぴらは甘い方が好き」