立ち上がった郁也は、大きな右手で私の左腕をつかんだ。
寝室へ繋がるドアを開けると、キンとした冷気が私の身体を包む。腕を引かれたままベッドにもぐると、シーツも毛布もひんやりとしていて、小さく身震いをした。
「俺、明日から三連休なんだけど」
言いながら、小さくうずくまる私を両手で包み込む。
お風呂上がりの郁也の身体は少し熱を帯びていて、包まれた私の身体もじんわりと温まっていく。
着替えたいけれど、ベッドから出ることをせずに、うずくまったまま「うん」と答えた。
そうか。さっきは『また月曜ね』と別れてしまったけれど、月曜日は祝日か。
「ユズもだろ?」
「……ん」
大学の頃は毎日が過ぎていくのが速すぎて、一日二十四時間じゃ足りないと思うことが何度も何度もあったのに。
最近は一日一日が果てしなく長くて、一刻も早く一日が終わってくれることばかり願っている。
夜になれば、日付が変われば、朝方になれば、郁也が帰ってくるから。前みたいにたくさん話すことはなくなってしまったけれど、それでも。
それでも、一緒にいれば、早く時間が過ぎれば、昔のふたりに戻れるんじゃないかって--。
「今回は予定入れてないから。どこ行きたい?」
「……寒いから、家にいたい」