君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



もし飲んでいるなら地下鉄で帰るわけだから、早くきてくれないと、もう終電が出てしまう。


《今どこ? お酒飲んでる? もう終電出ちゃうよ》


なかなか返信がこない。電話をしても出ない。両手でスマホを握り締めながら、微動だにしないスマホの画面の何度も何度も確認する。


郁也と合流しやすいよう、駅の構内ではなく外で待ちながら、早く早くと連絡を待っている間に、終電の時間が過ぎてしまった。


何度目かの電話をかけようとした時、やっと震えたスマホの画面にメッセージが浮かび上がった。


《やっぱりまだ帰れない》


……え? まだ帰れないって、なんで?


「……ちょっと、待ってよ」


せめてもっと早く、終電がなくなる前に連絡してよ。


郁也に何度メッセージを送っても、電話をかけても、一切反応がない。既読もつかない。


もう電車はないし、タクシーで帰るといくらかかるかわからない。


今日はもともと外食する予定じゃなかったし、けっこう飲み食いしてしまったから、手持ち金があまりない。


ここからマンションまでは、徒歩二時間以上かかる。待っている間に冷え切ってしまった身体で、この氷点下の中を二時間も歩けるだろうか。