君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



「いや、SNSじゃなくて動画配信サイトに投稿したんだよ」


全然答えになっていない。今回に関しては私の質問が悪かったとは思えない。


薄々思ってはいたけれど、彼はあまり人の話を聞かないのだろうか。それとも、求めている答えしか聞こえない、特殊な耳を持っているのだろうか。


「とにかく、何回きても無駄だからね。絶対歌わな--」


「お前の歌声、俺すげぇ好き。カラオケで歌聞いた時、こいつだ!って思ったんだよ」


絶対に目を合わせまいと夢中で焼きそばパンを頬張っていたのに、つい彼の目を見てしまった。だって、ずっと『歌え』しか言われていなかったのに、急にそんなことを言うから。


「ひとりでギター弾きながら、こんな歌声の女いないかなってずっと考えてて。お前の歌声聞いた瞬間、想像してたイメージ通りでビックリした。だから、お前以外考えられない」


まるで告白みたいな台詞に、またじわじわと体温が上がっていく。


音楽の話をする度に見せる、真剣で真っ直ぐな目。


カラオケで初めて声をかけられた時から気付いていた。私はどうもこの目に弱い。


「……だって、真剣に音楽やってるんでしょ?だったらもっと歌うまい子探した方がいいよ」