君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



問いただすところだろうか。でも、ここで問いただしたらどうなるんだろう。


私の勘違いだとしたら郁也を怒らせてこの状況が悪化するだけだし、本当に浮気をしていたとして、それを郁也が認めたら、私はどうするんだろう。どうしたらいいんだろう。


「……そっか。人気者は大変だねぇ」


口角を上げて、目を細めた。


追及する勇気なんて、私にはなかった。斉藤さんの時は聞けたのに、どうして今は聞けないんだろう。


違う。聞けないわけじゃない。聞かないだけ。大丈夫、郁也が浮気なんてできるような人じゃないことは、私が一番よくわかってる。


ロックをかけたのはなにか理由があるんだ。いや、嘘をついているなんて私の勘違いで、本当に後輩に見られそうになったのかもしれない。


大丈夫。私は郁也を信じてる。


「気を付けてね。いってらっしゃい」


--信じてる?


違う。郁也を失うのが怖いだけ。


万が一、本当に浮気しているとしても大丈夫。浮気なら許せる。謝ってくれたら、きっと許せる。


最後に、私のところに帰ってきてくれるなら。