君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



翌日、市販の薬を飲んで少しだけ熱が下がった私は、結局ひとりで病院へ行った。


郁也に病院まで送ろうかと言われたけれど、二日酔いの人に運転させたくないし、機嫌をとるにしても遅すぎる。


郁也は基本的に謝らないし、私も今回ばかりは謝りたくない。だから、もう怒ってないよ、の意味を込めて「ひとりで大丈夫だよ」と微笑んだ。


そう、郁也から謝られたことは一度もない。謝ってもらわなければ収拾がつかないほどの喧嘩をしたことがないし、今までそれを気にしたことはあまりなかった。


けれど今、強く思う。一言でいいから、『ごめん』と言ってほしい。そうしたらきっと、私は笑って許せるのに。


インフルエンザではなくただの風邪だと診断されて、処方された解熱剤を飲むと、あんなに苦しかったのが嘘みたいにたったの一日で平熱に戻った。


それでも頭痛や耳鳴りは多少残っていたけれど、なんとか動くことはできる。


薬を飲んだだけでこんなにも楽になれるのなら、胸の苦しみを治す薬もあればいいのに。