「……疲れたから、もう寝るわ」
立ち上がった郁也は、寝室のドアの奥に消えていった。
暗い部屋にポツンと座ったままの私の目は、じわじわと熱を帯びていた。高熱のせいだろうか。
今まで、些細なことがキッカケでくだらない喧嘩をしたことは何度かある。
けれどその度に、郁也は何事もなかったみたいに話しかけてきて、私も最後には笑っていて。
これは大丈夫な喧嘩なのかな。最後に笑い合えるような、いつか笑い話にできるような喧嘩なのかな。
大丈夫だって思いたいから、いつか笑い話にしたいから。だから、郁也。
ちゃんと私の目を見てよ。


