君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



さっきはすぐに既読がついたのにな。私、一分も経たないうちに返したんだけどな。


ああ、ダメだ。目を開けていることさえ辛い。


リビングの電気を消して間接照明だけつけると、スマホをテーブルに置いて目を閉じた。ただ意識が朦朧としていたのか、眠れたのかはわからないけれど、玄関の鍵が開いた音で目を覚ました。近づいてくる足音が頭に響く。


体調は……ダメだ。ちっともよくなっていない。
スマホで時間を確認すると、画面には4:38と表示されていた。


門限過ぎてるじゃん--。


「おかえり」


リビングのドアを開けた郁也は、ソファーに寝転がったまま言った私を見て、「あ」と一言漏らした。


今の表情に台詞をつけるのなら、『ヤバイ』しかない。


「……まだ起きてたんだ。あ、もしかして起こしちゃった?」


急いで目をそらし、ジャケットを脱いでネクタイを外す。それを受け取って『お疲れ様』と微笑むのが私の役割だったのに、今日はソファーがその役割を果たした。


もし体調が回復していたとしても、今日はジャケットを受け取ることはしなかったけれど。


「熱、どう? 下がった?」


どうして、初めて門限を破ったのが、よりによって今日だったの。


いつもなら許せたのに、どうして。