君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



***


カラオケの時とは違い、私はちゃんと話を聞いてからちゃんとハッキリ断った。


それなのに、彼はそれからも毎日のように私の前に現れ続けた。


もう誰かに呼んでもらうことが面倒になったのか、ドアから顔を覗かせて私に手招きをしたり、目を合わせないようにすれば中まで入り込んできて「無視すんなよ」と私を睨む。


今もそう、学食じゃ見つかるかもしれないからと、購買でパンとお茶だけ買って中庭に逃げたというのに、当然のように私の隣に座っている。彼はどこで私を見かけたのか、はたまた彩乃が密告したのか。


彼に言ってやりたい。立派なストーカー行為だと。


「しつこいなあ、もう」


「いいって言わないから」


え? いいって言うまで続くの? なんて強引なんだろう。


彩乃は私の味方をすることも彼を止めることも一切してくれないし、なんなら彼を応援しているし、彼が現れる度に間に挟まれて『イエスと言え』と圧をかけられて、私はもう根負けしそうになっていた。


でも今回は乗せられるわけにはいかない。学校祭なら一度で終わるけれど、動画なんて消さない限りずっと残ってしまう。


「ていうか、彩乃に聞いたけど、SNSにギター演奏の動画投稿してるんでしょ? 今まで通り、ひとりで投稿したらいいじゃん」