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廊下を歩く自分の足音が、鍵を回す音が、ドアを開ける音が、やけに頭に響く。
リビングの電気を点けると、パッと明るくなった視界に目をそらした。手に持っていたバッグを床に置いて、ソファーにバタンと倒れこむ。
今日は朝から体調が悪くて、ひどく頭痛がした。最近よく眠れないから寝不足なだけだと思っていたけれど、ガムを食べてもカフェインを摂っても効果はなく、むしろどんどん悪くなっていく一方だった。
風邪じゃないかと同僚に言われるまで気が付かなかったのは、私は滅多に風邪をひくことがないからだ。
ピピ、と音を立てた体温計を脇から抜くと、39:4と表示されていた。
最悪だ。熱が出たのなんて何年ぶりだろうか。それに、意識が朦朧とするなあとは思っていたけれど、まさかここまで高熱だとは思わなかった。
北海道の冬は毎日氷点下が続いていて、経験したことのない寒さでは風邪を引くのも無理はない。
暖房が部屋を暖めても震えが止まることはなく、着替えてベッドへ行きたいけれど、久しぶりに出た高熱は身体をひどくむしばむ。
少し動いただけでも物音がやけに耳に響いて、頭がズキンズキンと割れそうなほど痛む。


