君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



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年が明けると、郁也はやっと少しずつ残業が減ってきた代わりに、頻繁に飲みに行くようになった。特に金曜日は毎週だった。


仕事が落ち着けば、と思っていたのに、こんなんじゃなにも変わらない。いや、私の心境は変わっている。仕事なら仕方ないけれど、今は遊びに行っているわけで。


年末年始も名古屋には帰れなかった。今回は郁也の休日出勤じゃなく、社員旅行があったから。私だけ帰る選択肢もあったのに、なぜかできなかった。


自炊ができない郁也が心配だとか、郁也と一緒にいたいとか、そんな可愛らしい理由じゃない。今は離れちゃいけないと、身体のどこからか警告が出ているような気がして。


遊びに行く頻度はどんどん増えて、曜日なんて関係なく飲みに行くようになっていった。


それに比例するように、たまに早く帰ってきた日も休日も、ギターを弾いてばかりであまり話してくれない日々が増えていった。そんな郁也の姿を、私はソファーに座って見ているだけ。


ずっとギターを弾いているのは別にいい。寂しいのは、最近ではヘッドホンをつけてひとりで黙々と弾くようになってしまったこと。手に持っているのが、エレキギターに変わっていること。


アンプに繋がっているギターからは、ジャカジャカと音が鳴っているだけ。