名古屋にいた頃はお互い好きな時に友達と遊んだり実家に帰ったり、束縛は一切なく自由にしていた。


お互い連絡はちゃんとしていたから、不安になったことも不満に思ったこともないし、私たちはそういう付き合い方が合っているのだと思う。


「じゃあさ、一応、門限だけ決めとかない? この時間を過ぎる時は絶対に連絡する、みたいな」


それは門限というのだろうか。門限というのは、この時間までには必ず帰るっていう約束じゃないのかな。


疑問には思ったけれど、郁也らしい提案に笑った。


「終電の時間も考えて、一時くらい?」


「うん、わかったよ」


「で、お前、歌詞書いてんの?」


郁也が突然話を変えるのにはもう慣れた。話を変えるというか、とにかく音楽の話をしたがる。


「一応」


「ちょっと見せて」


「え? 絶対やだ。完成するまで絶対見せないって言ったじゃん」


「なんでだよ。俺も作曲したやつ聴いていいから」


「歌詞と曲は全然違うでしょ!」


変わらないなあ、郁也は。今でも、私と動画撮影をするのが一番楽しいと思ってくれているのだろうか。


私も変わらないな。ギターを弾いている郁也を見るのが、その隣で歌うのが、今でも一番好きだから。