君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



「まあ、さ。いい機会だと思うよ? なにかに没頭してたら、気持ちも楽になると思うし」


ハッキリとは言わないけれど、彩乃がなにを言いたいのかはわかる。


「……そう、だね」


高校生の頃、私はひとつの大切な恋を失った。


と言ってしまえば少しは美化されるけれど、普通に片想いして普通にフラれただけ。それでも、当時の私にとっては一世一代の恋だといっても過言ではないくらい、大切な恋だった。


今はもう彼を思い出して泣くこともないし、過去は過去だと割り切ることはできているのに、それでもまだ新しい恋はできずにいた。正確には、何度か恋をしたけれど、あの頃みたいな気持ちになることはなかった。


いつかまた恋ができるだろうと思ってはいる。でもそれは、学校祭のステージに立つよりも、動画投稿をするよりも、私にとっては難しいことのように思えた。