君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



「終電までには帰るから」


「迎えに行こうか?」


「お前、俺の愛車、廃車にする気?」


「ひどっ」


今でも遅くまで残業はしているけれど、最近はやっと休日出勤の回数が減ってきたから、休日に観光と運転の練習を兼ねてドライブをしたりしていて、私もそこそこ運転ができるようになってきた。なぜなら、助手席に乗っているのが鬼コーチだからだ。


函館も知床もまだ行けていないけれど、小樽運河は行った。白い恋人パークや羊ヶ丘展望台にも行った。他にも行きたい場所は山のようにあるのに、北海道の大地は広すぎて、とても日帰りじゃ行けないところがありすぎる。


旅行をする時間なんて郁也にはない。でも郁也の仕事がもっと落ち着けば、これからいくらでもいろんなところへ行けるはずだから。


「うそうそ。お願いしようかな。これるとこまででいいから」


ペーパードライバーの私は、彼氏を車で迎えに行くというのが小さな夢だったりする。それがやっと叶うわけだ。


本当はお店の前まで迎えに行ってあげたいけれど、中心部は車線が多いし路駐が多いし、運転に慣れてきたといってもほとんど初心者の私からするとちょっと、いや、かなり怖い。


「ユズも、いつでも遊びに行っていいからな」


「うん。ていうか、名古屋にいた時みたいに、お互い自由にしようよ」