君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



電話をしていたから連絡できなかっただけか、よかった、と安心したいところなのに、ソファーに座った郁也の表情がそうさせてはくれなかった。


眉間にしわを寄せて、眉を八の字にして、電話の相手に返す声はひどく沈んでいた。


郁也が電話をしている間にご飯を温めてテーブルに並べる。


敬語を使ってるし、先輩か上司だろうか。


「ありがとうございます」と言って電話を切った郁也は、「連絡できなくてごめんな」と力なく笑った。


いや、口元は弧を描いているけれど、笑ったというより、ただ口角を上げているように見えた。


「電話、誰だったの?」


「地元ん時の上司。ちょっと相談してた」


「相談?」


「いや、なんか……な。実は、ちょっと悩んでて」


うまそう、と言いながら端を指にはさんで、「いただきます」と手を合わせた。


いつもは隣に並んで食べるけれど、郁也の目を見て話を聞きたいと思ったから、テーブルを挟んで正面に座った。


「悩み、って?」


「新規事業に携わってるって言ってただろ? 今までずっと準備してて、もうすぐ本格的に始動するんだけど、実はリーダー任されることになったんだよ。まだ二年目なのに。でも期待してもらうのは嬉しいし、頑張りたくて」


そうだったんだ。