どう話題を変えていこうか悩んでいたのに、私の頭の回転が追い付かなかった。それどころか不覚にも食いついてしまったから、もう逃げようがない。
彩乃は高校の学校祭の時も誰よりもノリノリで、私を調子に乗らせた張本人なのだ。
今回は負けるわけにはいかないけれど、すでに「ユズが歌ってる動画も見たいな~」なんて言いながら、大きな目を細めてニコニコしている。
「フミくん、イケメンなんだから顔出せばいいのにね」
イ、イケメン……?
私からすると、目つきが悪くて不愛想でぶっきらぼうで、かなりとっつきにくいイメージだけれど、世間一般ではイケメンなんだろうか。
正直、私はあまりタイプじゃないからよくわからない。
「けっこうモテるしね。フミくんにスカウトされるなんて、羨ましがる子いると思うよ~?」
あれはスカウトと言えるのだろうか。ただ一方的に圧をかけられているだけのような気がするけれど。
そうか、イケメンでモテるのか。冷やかすようにニヤニヤと笑う彩乃から、なんとなく目をそらした。
「……そう、なんだ」
他の話題が全く浮かばないのは、私の頭の回転が遅いせいなのか。
それとも、彼の笑った顔を思い出してまた速くなっていく鼓動のせいなのか--彼の話をもっと聞きたいのか。
自分でもよくわからなかった。


