君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



***


「川村柚香と申します。よろしくお願いいたします」


四十五度にお辞儀をして、「どうぞ」と言われてからパイプ椅子に腰かける。


テーブルを挟んで向かい側には、本日の面接官である四十歳前後の男性がふたり。私が差し出した履歴書をまじまじと見ている。


郁也に相談してから一ヶ月、やっといくつかの企業に応募して面接に辿り着くことができた。


求人サイトを漁りに漁ってやっとわかったことは、なんのスキルもない私が、名古屋時代と同じ給与を保障される職に就くなんて無謀だということ。


郁也の言う通りいつまた転勤になるかわからないし、契約期間が決まっているバイトや派遣の方がいいのかと悩んだけれど、それでも求人検索の条件を『正社員』から変更することはしなかった。


『無理に就職しなくていい』『お金のことは気にしなくていい』と言ってくれたのは本当に嬉しかった。でも、そういうわけにもいかない。


正直に言えば甘えたいのは山々だった。でも私は、まだ甘えられる立場じゃないから。


「出身、ここじゃないんだね」


面接官のひとりが、左手でこめかみのあたりを搔きながら顔を上げた。


「あ、はい」


「今は一人暮らし……かな? なんでわざわざひとりで知らない土地に?」


「え……と」


うまく答えられない私を見て、もうひとりの面接官が言った。