君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



……ダメだ。言えない。郁也が今大変な時期なのはわかっているし、ひとつのことにしか集中できないこともわかっているし。


なにより、重い女だと思われたくない。


「まあ、そう落ち込むなって。とりあえず食え」


手に取ったねぎまを口元に運ばれて、それをぱくりと食べた。私が飲み込んだのを確認すると、次は豚アスパラ巻、ピーマンの肉詰め、厚焼き玉子と、テーブルに並んでいる料理を次々に私の口へ運ぶ。


それらを拒否することなくかぶりつき、もぐもぐと必死に食べ続ける私を、郁也はずっとにこにこと微笑みながら見ていて。


「……どうしたの?」


「お前、食ってるとこすげぇ可愛いよ。なんかもっと食わせたくなる」


なにそれ。嬉しい。


こういうところ、変わらないな。こういうところ、好きだな。


言葉がなくても大切にしてくれていることはわかっているから、前みたいに『言葉がほしい』と喚いたりはしないけれど、それでも。


こういう時、やっぱり言葉は大切だと実感する。たったそれだけのことで、私の心にかかっている靄を全部消し去ってしまうんだから。


ずるいなあ、郁也は。今はまだこのままでいいやって思ってしまうんだから。