「そんなことないと思うけど……。よさそうな会社があっても、給料がちょっと引っかかっちゃって」
「名古屋と札幌じゃ全然違うよな。まあ、いつまた転勤になるかわかんないし、無理に就職しなくても、派遣とかバイトとかでいいんじゃね?」
郁也は「落ち込むなよ」とまた笑って、運ばれてきた料理に手を合わせた。
派遣やバイト。とにかく正社員にこだわっていたから、その選択肢は考えていなかった。
「え? でも……」
「外でバリバリ働くより、なるべく家にいてくれた方が嬉しいし。俺、今すげぇ幸せなんだよ。金のことは気にしなくていいから」
お金のこともあるけれど、働きたいと思っているはそれだけが理由じゃない。結婚しているわけじゃない今の私は、世間一般でただのニートなわけで。
幸せだと言ってくれるのは嬉しい。私だって毎日幸せ。
でも、「結婚しよう」とは言ってくれないの?
結婚したら、ニートから専業主婦に昇格できて、郁也の言葉を素直に喜べるのに。
北海道にきて三ヶ月、プロポーズをされてから半年が経ったけれど、結婚について具体的な話は一度もしていなかった。
早く子供もほしいし、郁也が言っていた、“ベタだけど幸せな家庭”を築いていきたいのに。


