君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



ひとりで街を歩く度に、郁也が好きそうなお店を見つける度に、本当は郁也と一緒に歩きたかったな、と思ってしまうけれど。


郁也は新規事業に携わっているから、また一年で転勤ということにはならないと言っていたし、これからも時間はたくさんある。


とにかく今は、観光よりも、一刻も早く仕事を見つけなければ。就職してから一年間コツコツ貯めた少ない貯金は着実に減ってきているし、先のことを考えるとこれ以上減らしたくない。


いい加減、本腰を入れて探さねばと意気込んだ私は、家に帰ればネットで求人検索をして、名古屋で経験した文具メーカーの事務を中心に探した。


できれば前職と同じくらいの条件で働きたいけれど、名古屋ほど求人数は多くなく、条件を絞っていくとどんどん件数が減ってしまう。


業種を絞らずに探してみても未経験OKの求人は給与面が引っかかるし、給与面を優先すると経験はもちろん、さらに資格やスキルを求められる。


かろうじて事務の実務経験があるとは言えるものの、たったの一年だし、即戦力として入社できるほどの資格もスキルも持ち合わせていない。


《もうすぐ上がれるよ》