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北海道にきて三ヶ月が経とうとしていた。
六月に入ってもまだ空気はカラッとしていて、いったい夏はいつくるのかと思っていたけれど、七月に入るとどこかに溜めていた熱を一気に放出したかのように暑くなった。
まあ、暑いといっても気温が四十度近くまで上がることはないし、湿気が少なくて名古屋に比べればじゅうぶん涼しい。
エアコンをつけていなくても寝苦しい思いをすることがないなんて、真夏でこんなに涼しいのなら、ずっと住んでいたいくらいだ。
越してきた時から仕事を探してはいるものの、知らない土地で仕事を探すのは思っていた以上に大変で、未だに就職先を見つけられずにいた。
マンションの近辺には私が希望しているような仕事があまりなく、さらに車を持っていない私にとっては通勤が困難そうで。
札幌駅周辺や大通の方が圧倒的に仕事が多いし、公共交通機関を利用して中心部まで通う方が無難かもしれない。
といっても住所や地図を見てもピンとこない。まずは土地勘をつかむことが最優先だと考えた私は、郁也が仕事に行っている間、観光も兼ねてなるべく外出するようにしていた。
その甲斐もあって、徐々に地理をつかんできた。


