君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



彩乃の言う通り、高校時代は彩乃を筆頭にクラスメイトにもてはやされて、調子に乗った結果ステージで歌ったことはある。でもあまり大きな学校ではなく、人数も大学に比べたらずっと少なかったからこそできたことだ。


それに今回は、彼は動画を投稿したいわけで、顔も名前も全く知らない人たちに見られるかもしれないわけで。


ああ、ダメだ。やっぱり無理。


「ねぇ、あの人、何年生?」


「タメだよ。経済学部」


なんだ、敬語使わなくてよかったじゃないか。


いや、もし同学年だと知っていても、あのオーラを目の当たりにすると、どちらにしても敬語を使ってしまっていたような気もする。


「フミくんって、サークルでもギターうまくて有名だよ。あと、SNSでギター弾いてる動画も投稿してて、けっこう人気みたいだし」


「え? そうなの?」


「うん。顔は出してないけどね」


見る?と、すでに彼が動画投稿をしているらしいSNSの画面が表示されているスマホを差し出されたけれど、首を横に振った。


彼が音楽動画を投稿したいと言っていたのは、動画配信サイトではなくSNSだったのかな。いや、だからといって首を縦に振るつもりはないし、私には関係のないことだ。