君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



「俺だって作曲したことねぇよ。でもお前の歌で作曲してみたくなった」


こういうところ、ずるいなあ。


もう体温が急上昇することも心臓が飛び出そうなほど大きく波打つこともなくなったけれど、その代わりに胸の奥がじわじわと温かくなる。


幸せだなあ、好きだなあ、と、心から思う。


「ふたりで曲作ってみたいんだよ」


だったら全部作ってくれたらいいのに、「作詞はお前な」と決定事項のように言ってくるあたりが郁也らしい。作詞なんてしたことがないのに。


でも音楽に関して反抗するのは無駄だとこの三年間で痛いほど学んでいるから、「完成するまでは絶対に見せない」という条件付きで渋々了承した。


「でも、back numberは? 全曲制覇するんじゃないの?」


「別に急がなくていいだろ」


「……ふふ」


「なに笑ってるんだよ」


「別に」


それはつまり、急がなくても、この先いくらでも歌えるって、ずっと一緒にいるってことだよね?


言葉の代わりに、静かに流れ始めたギターの音に、そっと声を乗せた。