君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



もう三十曲ほど投稿しただろうか。まだまだ先は長いし、これからも新曲は増えていくわけで、終わりは全く見えない。


でも、つまり、それだけ長く郁也とこの時間を共有していけるわけで。一生解散せずに新曲を出し続けてほしいくらいだ。


夜ご飯を食べ終えた郁也は、お風呂から出てくるとすぐに音楽部屋に置いてあるギターを手に取った。


ご飯と食べたあとにすぐ食器洗いを済ませる人を心から尊敬する。私は一休みしてからじゃないと動けない。


リビングのソファーに座ったまま、ギターを愛でるように弦に指を滑らせる郁也を見ていた。毎日その姿を見ているというのに、毎日同じことを思う。


ギターを弾いている時の郁也が、一番好きだ。


「なあ、いつかふたりで作った曲投稿してみない?」


指先で軽く弦を弾きながら顔を上げた郁也が言った。


「え? いいけど、フミ、曲なんて作れるの?」


「作ったことないけど、やってみるよ」


郁也が作曲? 想像がつかないけれど、きっと、いい曲だろうな。


想像して自然と緩んでしまう頬を隠すように、マグカップに淹れた食後のコーヒーをちびちびと飲む。


「楽しみ」


「作詞はお前な」


これが漫画なら、確実に口からコーヒーを吹き出している。


「は!? 無理だよ! 作詞なんてしたことないし!」