「何って言われても⋯ただ練習してるだけだよ」


「⋯雪の中で?」


「一日でもサボれば体は五日分鈍るから。それに雪の中での練習って意外と役に立つんだよ」


「そうなの?」


「足腰強くなるし、どんな体制でもボール取れるように意識する様になるし、こんな過酷な中で練習してきたんだーって自信つくし」


「でも寒いじゃん」


「まあ凍える程寒いよ」



はは、と笑った工藤からはまた、白い息が吐き出された。



「一人なのに、練習なんの?」


「なるなる。全然」


「一人で練習しててバカみたいとか思わないの?」



そう口にした瞬間、ハッとする。

私すごい失礼なこと言った⋯。


「ごめん」そう言おうと工藤の顔を見上げれば────、




「俺、ただ野球が好きなんだよ」




工藤は傷付いた顔をするわけでもなく、怒った顔をするわけでもなく、優しく微笑んでいた。