「あ、」
そんな事を思い出していれば私に気付いた工藤がこっちに向かってくる。
何だよ⋯、と思いながらもカラカラと軽快な音を立てながら窓を開けた。
シャリ、という雪を踏み締める音を立てて窓の前までやって来た工藤。
「高橋、こんな時間まで何やってんの?」
「担任に雑用押し付けられて⋯」
「うわー、災難。ごくろーさま」
工藤が喋る度、真っ白な吐息が宙に登っていく。
見てるだけで寒いんですけど。
「工藤こそ、帰んないの?」
「帰るよ。もう下校時刻まで5分だし」
そう言って時計を確認した工藤に私はなんとなく、「何でこんな寒い中練習なんてしてんの?」と問いかけた。
「え?」
「いや、寒いじゃん、外。それなのに一人で⋯何やってんの?」
不思議そうに首を傾げた工藤にあれ、変な質問したっけなと思いながらもう一度そう聞けば工藤は困った様に笑った。