目が覚めると、置き手紙とチョコレートが一粒置いてあった。

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目が覚めたらナースコールを必ず押すこと
チョコレートは、今日頑張ったご褒美
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私はフッと笑ってしまった。
こういうところ、好きだなーって思いつつナースコールを押した。

看護師さんが瀬野先生に伝えてくれて、瀬野先生が病室に来た。

ガラガラ、、、
瀬野先生「どうよ?苦しくない?ちょっと聴診させてね」
勝手に聴診をはじめる。

なみ「、、、、」

瀬野先生「はい。まぁ平気そうだね。で、さっきの採血拒否は?まぁ、大体予想ついてるんだけどね、、、」

なみ「、、、」

瀬野先生「ごめんな、移植後の話をほとんどしなくて、不安だったんだろ??」

なみ「うん。。。そこまでしてやっぱ心臓欲しくない。。。」

瀬野先生「なみ、ちゃんと聞いてほしいんだ。なみの病気は進行型だ。薬で抑えても少しずつは進んでしまっている。完全に治す方法は移植しかない。もしかしたら、移植前に人工心臓を埋め込む手術もしなきゃならないかもしれない。無事に心臓移植が成功しても、免疫製剤も飲まなくてはならないし、プラス喘息の薬はもちろんあるし、食事も今まで以上に気を遣わなくてはならない。移植したからって、急に走っては行けないし、少しの風邪で入院することあるかもしれない。
....でも、どんなことをしても、俺は、なみに生きててほしい。これから、楽しいことは一緒にしたい。旅行に行ったり、お出かけしたり、映画見たり、、、なみがどんなに治療を嫌がっても、俺は心を鬼にしてなみを治すと誓ったんだ。お願いだから、、、、、本当にお願いだから、、、生きたくないとか言うな。」

そう言って、私を抱きしめた。

私は何も答えられなかった…


瀬野先生「今大急ぎで話しちゃったけど、またゆっくり説明するから。な?」

私はただ一点を見つめてるだけで、小さく
「うん」と頷いた。

お互い沈黙の時間が流れていて、その空気に耐えられなくなった私が口を開いた。

なみ「ねぇ?」


瀬野先生「どうした?」

なみ「私、今までずっとお荷物だったの。何度も入院して、何度も救急車で運ばれて、何度も心停止して、、、そんな私を好きになる人は居ないよ?だって大変だもん。....」

瀬野先生「なみとは、もう10年くらいの付き合いだけど、一度もお荷物だなんて思ったことないよ?なみだけじゃない。他の患者さんだって、そんなこと思ったことはない。生きれる可能性があるなら絶対に助けようとしか思ってない。それが俺の仕事だから。」

なみ「嘘だよ。病院から逃げたり、定期検診サボったり、絶対面倒くさいと思ってるでしょ??」
自分が思っていたより大きな声で言ってしまった。

瀬野先生「本当に思ってない!!ちょっと落ち着こうか。息ゆっくりして、吸ってーーー、吐いて、、、、吸ってーーー吐いて....よしよし上手。」

なみ「お父さんだって、お母さんだって、年に数回しか帰ってこないし、、、、自分たちが帰ってこれないからって、お手伝いさん雇うだけだし。。。お兄ちゃんなんて、帰ってきたらめっちゃ怖いし...」
静かに眼から涙がこぼれ落ちた。

瀬野先生「違うって、お父さんもお母さんもなみのこと心配してるよ?でも、毎回連絡するといつも体は大丈夫かどうか心配しすぎて、なみがすごく嫌がるのを知ってるんだよ。それで、なみと喧嘩になるのが怖いんだよ。」


なみ「たしかに、、、毎回それ言われたら私も怒っちゃうわ...ははは。私今までお母さんもお父さんも近くにいなくて平気だったのに、、、おかしいな...どうしたんだろ?私...ははは」

瀬野先生「無理に笑わなくていいって。ずっと我慢してたのは知ってる。」
頭をポンポンと叩いた。

コンコン...
「失礼しまーす」ガラガラ〜

大輔「あ、瀬野先生!お疲れ様です〜。あ、今じゃないほうが良いですかね、、、?」

瀬野先生「大丈夫大丈夫。喘息の確認かな?」

大輔「あ、はい!」

瀬野先生「じゃぁ、俺はここで、、、なみ、ちゃんと診察受けろよ!!」
そう言って病室を出ていった。