巻き込まれ召喚された身でうっかり王子様に蹴りを入れたら、溺愛花嫁として迎えられることになりました【WEB版】


「……………………そうか……」
 
 私などには想像もつかないほど、殿下のおっしゃったことは大変なことだと思います。
 一度捻れたものを元に戻しても、捻ったあとはどうしても残りますしね。
 フォレスター様もなかなか拗らせておいでのようですから、それをすべて吐き出すのも大変でしょう。
 でも、それでも、忌々しそうに表情を歪ませておいでですが……私に呪術を使うのはやめてくださいました。
 ()()()()、そして精霊に認められた者として、間違えたことも含めてすべて飲み込んで捻れて拗れて絡まった、『森人国』を変えていく……。
 考えただけで恐ろしく大変ですね……。

「謝らないぞ」

 それだけ言って、会場に戻っていくフォレスター様を見送ります。
 まあ、謝ってほしいわけでもないので構わないのですが。

「理解していただけたのでしょうか」
「目の前で呪術の犠牲になった者の苦しみが癒えていくのを聞いたのだから、王として理解はしただろう。……それにしてもリセは無茶をする」
「え?」

 癒えたんですかね?
 とも思うのですが、私は彼らの気持ちがわかりました。
 その“気持ちがわかる”だけで呪いの根幹がほぐれていくのを、フォレスター様は見て、そして理解したのだそうですから……まあ、それならよかったです。
 私も少しお役に立てたなら、なによりですね。
 でも、それが殿下には胃が痛かったようで。

「すみません……?」
「反省の色がない」
「す、すみません……」
「……いや、いい。ただ、こんな結果になるとは正直思っていなかった。用意していたものが全部無駄になっただろうが」
「…………」

 確かに、あえてお妃様や陛下が警備の隙として、この場所を用意してくださいまして。
 本当に危険になったらこの場所を会場と繋げて、エルフ族のこれまでの所業を全部他の種族の前でバラす算段や、転移させて私を助ける算段や、『森人国』を囲うように結界を張ってエルフ族の頭が覚めるまでエルフ族を封印してしまうとか……そういう計画を全部使いませんでしたね!
 でも、私は元々エルフ族と他の種族がまたお話し合いをできればと思っていたので私としては大成功なのですが……。
 あ、そうです!

「で、ですが! 殿下が私を信じて用意してくださっていた、会議室は使えますよね!」
「まあ、ああ言った手前使うしかないけどな。国際会議が終わったばかりなのに、また国際会議みたいなことをやるハメになるとは……。だが、今回は形だけでなく腹を割って話すとするさ。始祖様も“原初の精霊”ティムファーファ様も同席してくださるとのことだしな」
『『え』』
「してくださるだろ? もちろん」
『……ま、まあ、リセが望むのなら仕方ない……めんどくさいが』
『う、うむ~、めんどくさいけどリセも出席するなら、出てもいいナリ』
「わあ、ありがとうございます! 私、あのような場では不安だったので心強いです!」

 えへへ、とまんざらでもない顔をしてくださる黒檀様とティムファーファ様。
 お二人が出席してくださると、きっと他の種族の方もお話を聞いてくださると思うんです。
 ……それにしても……。

「国際会議……」

 殿下が「やったばかり」と言いますが、私にとってはもう二ヶ月程前のことになりますね。
 感覚の問題だとは思います。
 でも、確かにまだ二ヶ月ばかり……。
 二ヶ月ばかりで、私は——。

「どうした? リセ」
「……いえ、殿下と出会ったのも国際会議の日だと思いまして」
「あ……ああ……」
「? 殿下?」

 ぶわり、と殿下の顔面が真っ青になり、玉のような汗が噴き出しました!
 な、なぜ!? ど、どうして!? どうされたのですか!

「殿下!? 殿下、どうされたんですか!」
「い、いや、そ、そうだな、で、出会った時……」

 がく、と私の肩から手を外し、殿下が抑えたのは——股間。
 私もそれを見て、ぶわりと変な汗が出ました。
 あ、ああ、なるほど……お、思い出してしまわれたんですね……なるほど……。

「わざとではないんです! 本当にあれはたまたま、偶然……!」
「わ、わかってる! 記憶に刻まれているだけだ! 気にしないでほしい!」
『おい、お主これから即位の儀であろう? そんな調子で大丈夫なのか?』
『ひゃ~、股間を抑えながらの即位だなんて史上初ナリな~』
「殿下……!」





 無事、殿下のトラウマが更新されました。