巻き込まれ召喚された身でうっかり王子様に蹴りを入れたら、溺愛花嫁として迎えられることになりました【WEB版】

 
「え? は、はい。わかりました……?」

 どうしたのでしょう?
 屋敷から出るな?
 な、なぜ?

『ありがとうございます。……実は今、エルフの国から使者が来ているのです。……リセ様を()()と』
「え?」

 私の反応を見てなのか、奈々様の声で事情が説明されました。
 そしてそれは、背筋に薄寒いものを感じる理由。
 エルフの国の、使者?
 私を——()()
 な、なにを言っているのでしょうか。

『おそらく、ティムファーファ様とリセ様が契約したことが、彼らのあの長い耳に入ったのでしょう。どうやって知ったのかは、まだわかりかねますが……今のあの者たちにリセ様を渡す道理はこちらにはありません。手続きももう終わっておりますので、リセ様は今は我が国の国民となっております』
「っ……」

 ティムファーファ様のことが!
 ……ああ、迂闊でした。
 確かにエルフの国の王侯貴族は、私を——いえ、『彼女たち』含めた私を『魔法を使える人間』欲しさに召喚したのです。
 私がティムファーファ様という“原初の精霊”と契約すれば、それは……私が魔法を使えるようになるということ。
 それも『彼女たち』よりも高位の精霊と契約して。
 ……私が使えるようになったかどうかは微妙なニュアンスのようにも思いますが……はい。

「まあ、姫様はエルフの国におりましたの? ……あら? ですがなぜ人間の姫様がエルフの国に? あの国は自分たち以外の種族を国内で受け入れて住まわせるような、そんな寛容さは微塵もないでしょう?」
「姫様のおかげで心を入れ替えたあたちたちの方がかんよーですわね!」
「ですわねん!」

 ドヤァ!
 と、実民様と朔子様が胸を張るので「そうですね」と微笑む。
 まあ、実際その通りな気もしますし。

『ご安心ください。リセ様のことはこの国で必ずお守りします。ハイエルフが出てきたとて、あなた様をあの国に戻すことはありえません。ですので——実民様、喜葉様、朔子様、お三方で必ずやリセ様と始祖様、そしてティムファーファ様をお守りするようお願いいたしますよ』

 奈々様!?
 私ごときのために、この三姫にそんなことをお願いするなんて!?

「あら、そんなの“筆頭侍女頭”として当然の務めですわ! おーっほっほっほっほ!」
「はぁーーー? “ひっとーじじょがしら”はこのあたちですけどぉーーーー?」
「じゃあ朔子は“最強超美人筆頭侍女頭”になりまーすん!」
「「ハァーーーーーーー?」」
「…………」

 うーん、仲良しさん……。

『ミー、竜人に守られるほど弱くないナリ』
『であるな。余を守ろうなど、子孫の分際で生意気だ』
『申し訳ございません。しかし……エルフは時折話が通じませんので……』
『あー、それはわかるナリ~』
『ふむ』

 納得されています……。
 いえ、話が通じないはわかりますけれど。

『それと、本日午後、藍桜様と藍子殿下がそちらのお屋敷にお伺いしたいとのことです。いかがでしょうか?』
「え!」

 藍子殿下がいらっしゃる!?
 あ、いえ、王太子妃邸なのですから、殿下が来られるのはなんら問題はないんですよね!
 え、殿下が来る……殿下が……。

「……あ……え、ええと……」

 しどろもどろになって、声がつっかえますね。
 実民様たちに告げた、あの言葉は心から、自分の今思い感じていることを言葉にしたもの。
 そう、私は実民様たちに、殿下を諦めてほしかったのです。
 それは、私が——私が藍子殿下を……す、好きになりたいと思ったから。
 私のために自らを含めた現状を変える、変わりたいとおっしゃったあの人に釣り合う人間になるのは、まあ、その、無理だとは思うんですよ、私ごとき。
 けれど、じゃあなにもしないままでよいのかと言われたらそれこそダメ人間確定ではないですか。
 せめてあの方のお役に立ちたいので、私も、少しでも変わろうと思ったのです。
 では、どのような方向に変わればよいのかと思った時……私は、私を大事にしてくださる藍子殿下のことを……好きになりたいと思いました。
 普通の女の子のように——。

「…………」
『? リセ様? どうかされましたか?』

 でも、なんででしょうか。
 そう思えば思うほど、私の体は熱く、固くなっていく。
 変な汗がぶわりと出てきて、困惑します。
 居ても立っても居られないような、視線をどこに置けばよいのかわからないような。
 いえ、別に、その、なにがどうというわけでなく。
 ただ、藍子殿下は私の将来の旦那様なのが確定なんだな、と思うと、その度にこうなるといいますか。
 あの方が——藍子殿下が、私の、将来の……。

「あばばばばば……」
『リセ様!?』
「あ! わかりましたわ! なるほど了解です! ご安心ください奈々様! 午後何時くらいになりますでしょうか!」
『二時頃には到着するかと思いますが』
「二時ですわねん! 了解ですわん! 朔子たちが姫様をそりゃーもーかわいーーーーっっっく仕上げちゃいますわん!」
「十二単にしますか? 流行りの軽和装単にしますか? あたちが最先端に仕上げて見せますよ!」
『ああ、なるほど。お任せします』
「「「お任せを!」」」
「え?」