巻き込まれ召喚された身でうっかり王子様に蹴りを入れたら、溺愛花嫁として迎えられることになりました【WEB版】

 
『ギャオオオオオオオ!!』

 キ、キ○グ○ドラです……!
 三つの竜頭を持つ、巨大怪獣! これは、アウトなのでは!?
 あ、いえ、普通にお三方が変身合体してしまったのを見ているのでセーフ……?

『ギガント ブレス』
「リセ、俺の後ろに下がれ!」
「は、はひ……!?」

 藍子殿下に、なかば突き飛ばされるように倒れると、私の全身を巨大な影が覆い隠します。
 見上げるとそこには竜の姿に変身した藍子殿下。
 その姿を見た時、ようやく私も現状がしゃれにならないくらい危険な状態であるとわかりました。
 なぜなら彼女たちが合体した竜の姿の方が、殿下が変身した竜の姿よりも二倍近く大きかったのです。
 踏み潰されてしまうことはないと思いますが、三人の竜頭が協力して放った黒く極太の火炎は殿下の全身を呑み込んでしまいます。
 その殿下の真下に庇われた私も、炎の中。
 けれど、不思議なことに熱くありません。
 これはいったい……?

『やれやれ、困った娘どもだな』
「黒檀様……!」

 殿下の足元にいる私を、さらに黒檀様の結界が守ってくださっていました。
 スノードームのような半円の中にいたことで、熱さなどから守られていたのですね。
 けれど、これは――!

「黒檀様、藍子殿下は……!?」
『王族ならばこの程度で死ぬことも、負けることもないが……』

 そう言葉を濁し、見上げる黒檀様。
 炎は――なかなか途切れません……!

『三人のそれなりの血統の娘たちがリセへの怒りのみで繋がっておる。夫として見せ所じゃな』
「っ……!」

 やはり、この状態は普通ではないのですね。
 ズリ、と、殿下の巨大な足が炎の勢いに押されて僅かですが下がっていきます。
 ど、どうしましょう?
 そもそも、私たちは彼女たちに話し合いで穏便に『仙森ノ宮』から退去いただければ、それでよかったはずなのに……!
 けれど、彼女たちの主張は殿下に認めてもらえなかったのですよね。
 元々認められていなかったので籠城のような状態になっていたのですが……。
 あぁ、困りました……落とし所がまったくわかりません!
 誰もが納得する、傷つかないように終わらせることはできないのでしょうか。
 って――それを考える段階もしかして終わってませんか?
 す、すでに殿下が炎を全身に浴びるという実害が出ていました!
 ……ああ、私本当にダメダメなやつです……。

「ど、どうしよう……どうしたら……! 黒檀様……」

 ――黒檀様にすがりついている私は、彼女たちの言う通り本当に無力。
 力で押さえつけようとしてくる人々に、私はいつも跪いて頭を下げていました。
 でも、私はこれから殿下のお側で、ああいう人たちからこの国の方々を守らないといけないんですよね。
 こんななにもできない、私が……。

「……黒檀様」
『うむ?』
「実民様たちを助けて差し上げるには、どうしたらいいのでしょうか」
『……。うん? あの者たちを助ける、とな? 倒す、ではなく?』
「倒すだなんて! いけません、違うのです! 実民様たちもこの国の国民ではありませんか。この国のことを私よしもずっとご存じで、大切に思っておられるから私のことが認められない、と……そうおっしゃっておりましたし」
『え? そんなこと言っておった? いつ? それっぽいこと言って自分たちのわがまま突き通そうとしてたようにしか見えんかったんだが』

 え? そ、う、うーーーん?

「……ですが、このままではなにも解決しませんよね」
『そうだな。合体はやっている者たちの心身の負担になる。負の感情であれば、戻るに戻れなくなることもある』
「!」

 えええ!?
 た、大変じゃないですか~~~!?
 ほんとに早くなんとかしないと!!

「黒檀様、お知恵をお貸しください! この状況を、なんとかしなければ!」
『いやいや、ここはリセを娶る王太子の頑張るところ。リセは見ておるだけでよい』
「ええええええ!?」

 でも、でも……炎は未だ収まる気配はありませんし……。
 藍子殿下の足下も、私がいる場所からさらに下がっています。
 完全に硬直状態ではないですか!

『にゃむにゃむ。まったく黒檀は意地悪ナリね~~~』
「!? あ、あなた様は……ティムファーファ様!」

 白い柴犬の姿が突然足下に現れ、なにか食べておられますね!?
 あれ、それはもしや着物に入れっぱなしにしていた金平糖でしょうか?
 え、いつの間にか勝手に取って食べておられる……?
 というよりも、どうやってここに!?
 こんな、四方が炎に囲まれた状態なのに……!

『あんなになるほど根性ひん曲がった娘どもでも、リセは助けてあげようと思ってるナリ?』
「え? ……は、はい、それは……」

 実民様たちのこと、ですよね?
 ティムファーファ様は私が頷くと、愛らしい四本のおみ足で立ち上がる。

『そうか』

 と、それだけ言ってティムファーファ様も静かに頷きました。

『では、ミーがユーに魔力と魔法を与えるナリ! この原初の精霊たるティムファーファが、リセに契約して力を貸すナリよ!』
「え……え?」
『まあ、元々異世界から攫われてきたユーを“原初の精霊”として放って置くつもりもなかったナリしねー。さあ、改めて名を名乗るナリ!!』
「私が……魔法を!?」
『本気か、ティムファーファ。余もいるのに!』
『よきよき~! もちろんリセ次第ナリよ~』
「え、あ……」