肥大化した霊魂の中で柴樹の手が力なく垂れる。

 嘘や……。嘘や!!!




「お前……! 柴樹を返せ!!」




 何もできないんがもどかしい。オレには柴樹みたいに神様もおらんし、兄貴みたいに周りの邪魔なヤツら、除霊(じょれい)する力もあらへん。




「お前自分がなにしとんのか見てみぃ!! 兄貴も突き落として、家もめちゃくちゃにして、柴樹も……こんなん、自己中や!!」



 オレにできるんは、おもっきし怒鳴り散らすことくらいや。柴樹の言った〝呼びかける〟に相当するかはわからへん。

 でも、これくらいしかできひんねやったら、とことんやったる!

 ひしひしと感じるコイツの感情。

 悲しい、憎い、つらい、怖い、死にたい。

 いろいろ思うところはあるかも知れへん。けど、たぶんほとんどコイツの本心ちゃう。




「さっきから死にたいだの殺したいだの、うっさいわ!」



 反応を見せなかった雨香麗が少し動き、もの言いたげな目を向けた。

 もう少し。もう少し感情を揺らせば……!




「自分の体見てみ。お前が感じてるもん、そこにまとわりついたヤツらのもんや。いい加減目ぇ覚まして自分と向き合え!!」




 強くそう言った時、わずかながら雨香麗の表情がぶれ、肥大した死霊どもに乱れができた。

────今や!