「はあ!? そんなことねえよ! 詩乃は俺たちのバンドに必要なんだよっ!」


 怒りながらの律くんの言葉。

 姫奈ちゃんは唖然とした様子だった。


「お前にそんなこと言われる筋合いはねえ! 詩乃は俺たちの大事な仲間だ! いじめたら許さねえからな!」


 まくし立てるように姫奈ちゃんに言う。

 姫奈ちゃんは涙目になっていたが、それ以上は何も言えないのか、俯いた。

 ――律くんの言葉が、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

 私まだ、足でまといなのに。

 ふたりがせっかくバンドに誘ってくれたのに、まだあんまり上手く歌えないし。

 ライブに出る勇気だって、ないのに。

 こんな私を、律くんは。

 昨日は悩みを聞いて励ましてくれて。

 今日は大事な仲間だって、言ってくれた。


「詩乃、もう掃除終わったのか」

「え、え……。だいたいは」

「よし、それならもう第二音楽室に行くぞ」

「は、はい!」


 そのまま私の方を見ずに、ぶっきらぼうな足取りで律くんは教室から出ていってしまった。

 残された姫奈ちゃんは、いまだに俯いている。