Re:START! ~君のバンドに、入ります~

 律くんも、用事がある時以外は私に話しかけに来るタイプではないので、姫奈ちゃんの見ている前では接せずに済んだ。

 すでに放課後になり、掃除当番だった私は教室の床の雑巾がけをしていた。

 律くんと響斗くんは掃除当番ではないから、もう旧校舎の第二音楽室へと行ったはずだ。

 ――私も早く行かなきゃ。

 そんなことを考えながら、雑巾がけがだいたい終わった私は、バケツの水に雑巾を浸して、すすいでいた。

 ――すると。


「……ねえ、ちょっと」


 頭上からぞくりとするような冷たい声が聞こえてきた。

 私はびくりとしながらも、顔をあげる。

 姫奈ちゃんだった。

 私を、凍てつくような冷淡な表情で見下ろしている。


「な、なに……?」


 一瞬で恐怖に支配された私は、かすれた声でそう言った。

 すると姫奈ちゃんは、冷たい顔をしたまま、低い声でこう言った。


「私昨日見ちゃったんだけど。旧校舎の第二音楽室で、詩乃ちゃんが律くんと響斗くんと、何か音楽を一緒にやってるところ」

「え……!」


 思わず立ち上がる私。